■ 一人の女の子の決意が復活させた幻の酒
紅葉の名所として有名な滋賀・百済寺。織田信長が生涯で唯一の勅願寺と定めた寺として、また清酒の起源「僧坊酒」を醸造していた事でも知られています。
しかし天正元年(1573)、信長は敵対勢力とも縁のあった百済寺をひどく憎んでしまい、百済寺を焼討ちし、同時に「僧坊酒」の歴史も幕を閉じてしまいました。
今回、兵庫県伊丹市出身の比嘉彩夏さんがこの「僧坊酒」を復活させようとわざわざ百済寺の近くに移り住んみ”
幻の銘酒「百済寺樽」復活プロジェクト”を立ち上げました。色んな困難を乗り越え、ここに444年ぶりに「百済寺樽」が復活しました。
立香はりんごや白ブドウを思わせる瑞々しいフルーツの香り、ドライハーブのミンティな香り、さらに笹の葉のような爽やかな香りなどが楽しめます。含み香は蜜入りリンゴのような熟した果実の香りに杉の木の優しい甘い香りが印象的です。
口当たりはとてもスムースです。熟成して角が取れ、まろやかになったアタックは素晴らしいの一言。ゆったりとした広がりは丁寧に仕込まれた事がよくわかります。
味わいはトロリとした甘味がフワッと広がったかと思えば、続いて「玉栄」独特の野趣に溢れた旨味が迫ってきます。しっかりとした骨太の力強い旨味です。更に奥に潜んでいた心地よい渋味や少しの苦味がキリっとしたフィニッシュに誘ってくれます。
後口のキレも素晴らしく、また余韻も適度に長くまとまりの良いアフターテイストとなっています。全体的にしっかりしたコクと、マイルドな旨味に満ちた酒。落ち着いた酸があるので色な料理にも合わせやすいです。
2022年秋より蔵の後継者、喜多麻優子氏が杜氏をつとめます。以前の倍の回数で温度経過をチェックするなど、今まで以上に丁寧できめ細かい酒造りを実践されており、出される新酒全てが素晴らしい出来栄えで驚いております。今回も過去最高の百済寺樽が搾れました。歴史の浪漫を感じながらお楽しみください。