- 黒龍酒造
- 福井県
九頭龍 宵月 1.8L
黒龍酒造には二つのブランドが存在します。ひとつは「黒龍」。“華やかで透明感のある吟醸系”が主体のブランド。そして「九頭龍」は“食に寄り添い、様々な日本酒の楽しさを表現する”ブランドです。この「宵月」は、秋の夜にふさわしく「しっとりとした味わいを冷やから熱燗まで楽しめる純米酒」としてリリースされました。
立香は穏やかで落着きがあります。完熟リンゴのような甘い香り、そして穀物由来のクリーミーでふくよかな香りが印象的です。含香は和菓子の工房に入ったときに感じるような、どこか懐かしい甘味を連想させる香りです。派手な吟醸香とは対照的に、心を静めてくれるような香り立ちはさすが九頭龍だと思います。
口に含むと、まず驚くのはその「柔らかさ」。角がなく、まるみのある旨みが舌全体にゆっくりと広がります。
味わいは黒龍らしい透明感を残しながらも、九頭龍らしいコクと深みがじんわりと広がるのが特徴。バランスがとれて思わず盃が進みます。後口はスッとしたキレが実に心地よく、飲み疲れしない上品さが感じられます。程々の余韻は、秋の夜長を楽しむための心憎い演出のように感じました。
このお酒は、温度によって表情が大きく変わります。冷酒にすれば清らかで軽快、常温では旨みが膨らみ、そしてぬる燗(42℃前後)にすると一気に円熟味が増します。燗をつけることで、まろやかな甘みと旨味が引き立ち、秋の夜の晩酌にぴったりの風合いになります。
合わせる料理は、焼き魚や煮物、きのこ料理など秋の味覚がよく合います。特に秋刀魚の塩焼き、大根おろしを添えて「宵月」と一緒に味わうと、もう言葉がいらないほど。
九頭龍ブランドは、“食中酒の理想形”を目指して造られています。その中でもこの「宵月」は、秋という季節を象徴するような、穏やかで包み込むような存在。派手さではなく、静けさの中にある美しさを楽しむ一本です。きっと、心の中にやわらかな灯りがともるような、穏やかな充実感を感じていただけるでしょう。